ストレスからくる身体の不調ってなんだろう

コラム

ストレスが身体に悪いということはよく知られていますが、ストレスで体調を崩さないようにするにはどうしたらよいのかというと、その答えは簡単ではありません。結論から言うと、心と身体の両方のケアが必要です。

身体の症状が長引くのはストレスの影響かも

「心身症」という病気があります。これは疾患名ではなく、心理社会的な影響で身体の症状がでている場合に、その病状をまとめて心身症と呼んでいます。

具体的に言うと、ストレスの影響から胃潰瘍になったり、円形脱毛症になったり、あるいは、ストレスの影響で身体の症状が長引いたりしている状態です。実際に身体の症状として出ているのだけれど、精神疾患ではない病状を指します。

心身症の治療は、まずは身体のケア

基本的なことですが、食事と運動と睡眠を改善し、身体によいことをしましょう。これが非常に効果があります。大切だと分かっていても、なかなかできない場合もあると思います。ウォーキング、ストレッチ、バランスの良い食事、お酒やたばこを減らすなど、まずはできるところからやってみましょう。自分にあう方法を見つけて、身体をいたわってあげてください。自律神経のバランスが乱れていることも多いので、生活習慣の改善で自律神経が整うと、身体全体に良い影響があります。

ストレスって言われても、ストレスないけど・・・

ストレスがかかり続けるということは、治療と悪化を一度にやっているようなものですから、身体の治療を続けてもなかなか改善していきません。

心のケアは、まずはストレスを自覚することです。これがとても大切です。

「ストレスはないです」と感じられる方もいると思います。

ないかもしれませんが、自分では気づかないストレスがあるのかもしれないと考えてみると、そういえばと思い当たることもあるのではないでしょうか。主治医の先生に「ストレスかも」と指摘されたら、そういう可能性もあるかな?と考えてみて下さい。カウンセリングでも、まずはストレスに気づくことから取り組むことが結構あります。

仕事を人に任せるのはかえって気疲れするから一人で全部やっちゃおう

上司の言い方がきついけど自分のせいだから我慢しなきゃ

子育てが大変だけど、親になったんだから頑張らないと

などなど、色々な思いを心にしまい込んではいませんか?自分の身体をいたわることより、生活リズムを崩してでも無理を続けてはいないでしょうか。

ストレスじゃないと思っていることの中に、ストレスが隠れている場合があります。ストレスと感じないように気持ちを抑えている場合があります。また、暑さ寒さや騒音といった物理的な影響や、昇進や引っ越しもストレスになります。ちょっとしたことでも結構ストレスになっているのです。

日頃大変だなと思っていることの中で、減らせそうなことであれば、それを減らしてみましょう。心と身体はつながっていますので、心の負担が軽くなると、身体にもよい影響を与えます。

当センターでは精神科だけでなく、地域の内科等のクリニックとも連携しています。それは、心と身体の両方のケアが非常に大切だと考えているからです。皆さんも、心と身体の両方に目を向けて、自分を大切にしていきましょう。ストレスに気づいたら、まずは減らせることから減らしてみましょう。限界まで頑張る前に、早めに周りの人や医療機関などを頼りましょう。

「心身症」と似たような精神疾患に、「身体症状症」があります。少し前まで「身体表現性障害」と言われていました。身体症状症と身体表現性障害は厳密にいうと同じではないのですが、どちらも精神的な影響で身体の不調を感じる病気です。

心身症と身体表現性障害の違いは、簡単にいうと検査をして異常が出るか、出ないかです。異常があれば心身症、なければ身体表現性障害ということになります。心と身体を分けて考えており、検査してもはっきりとした原因がよくわからないとなると、精神的な影響だろうと判断されます。しかし、検査して異常は出なくても絶対に異常はない!と医学的に言い切れないこともありますし、心と身体は相互に影響し合っているので、この基準で診断することに無理が生じていました。そこで、新しい診断基準である「身体症状症」では、検査で異常があるかないかを重視するのではなく、その身体症状に対して医学的に考えられるより不調や不安を強く感じている場合に診断されるようになりました。

まとめると、どちらも身体の症状に心が影響している状態ですが、
「心身症」は、身体疾患があり、その原因や経過にストレスの影響がありそうな場合
「身体症状症」は、検査してもなにもでない、あるいは、異常はあるけれど、その結果以上に本人の苦しみや不安がとても強く、しかもそれが半年以上続いている場合

です。どちらの診断がついたとしても、心と身体の両方の治療が非常に重要になってきます。精神科では心のお薬だけを出しているというイメージの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際の治療では、必要に応じて身体の症状を改善するお薬も処方されることが多いようです。

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