心理療法
今回は緊張を緩める方法のひとつとして筋弛緩法をご紹介したいと思います。
日頃から肩こりや腰痛、頭痛などに悩まされている方も多いのではないでしょうか。生活の様々な刺激の中で、気づかないうちに身体に力が入ってしまうことがあります。
心身相関という言葉があるように心と体は密接に関係しています。体に緊張が続くと、身体のコリや痛みにつながるだけではなく、心も緊張して不安、抑うつなど気分に影響します。健康に過ごすためには心も体も緊張を緩めて、リラックスした状態を保てるといいですね。
筋弛緩法とは
筋弛緩法(漸進的筋弛緩法)はアメリカの精神科医であり生理学者のエドモンド・ジェイコブソン(Edmund Jacobson)が100年ほど前に開発したストレス対処のためのリラクセーション法です。
ふだん私たちの体は知らないうちに力が入っています。気温の変化でも力が入りますが、不安やイライラなどのストレス、姿勢のゆがみなどでも体は緊張してかたくなります。
筋弛緩法は体の部位に意識的に力を入れたあとにストンと一気に力を抜くことによって体の緊張を緩ませ、心のリラックスにつなげます。
ジェイコブソンが最初に提唱したやり方は、一つひとつの筋肉に対してトレーニングする方法だったので、1回に1,2時間、習得までに数か月かかっていました。しかし、その後の研究が進み、現在では、簡易的に数分でできる方法でも効果が出ることが実証されています。簡易法では、たくさんの筋肉を一度に実施する方法や、特定の筋肉を中心に実施する方法など色々あります。
今回は、力が入りやすい筋肉を中心に徐々に全身を弛緩させる方法を紹介します。
※怪我やご病気がある場合は、力を入れることで痛みが出る場合があります。痛みのない部位だけ実施して下さい。力は入れずに筋弛緩のみでも効果があると言われています。無理のない範囲で行って下さい。
筋弛緩法のやり方
ベルトやうで時計など体を締め付けるものを外します。ゆったりとした姿勢で椅子に座って、体の各部位に10秒間力を入れて一気に力を抜き、緊張のとれた感覚を20秒間感じます。力を入れるときは力いっぱいではなく、60~70%の力にしましょう。
両手:両手をギューッと握って(10秒) → パッと手を広げます(20秒)
両腕:力こぶを作るように腕を曲げて脇をしめて力を入れて(10秒) → ストンと力を抜き両腕をぶらんと下に垂らします(20秒)
両肩:両肩をぐっと耳に近づけるように上げて(10秒) → ストンと力を抜いて肩をおろします(20秒)
背中:腕を曲げて、肩甲骨を引き寄せるように力を入れて(10秒) → ストンと力を抜きます(20秒)
顔 :目をギューッとつぶって、口をすぼめ奥歯をかみしめて顔全体をすぼめるように力を入れて(10秒) → ぽかんと口をあけて力を抜きます(20秒)
お腹:お腹を背中にくっつけるように力いっぱいへこませて(10秒) → スーッと力を抜きます(20秒)
脚 :脚全体に力を入れて床から持ち上げて、つま先は上を向けふくらはぎに力が入るように足を伸ばして(10秒) → ストンと力を抜きます(20秒)
消去のためのストレッチ
筋弛緩法を行った後に動き出す時は、急に立ったりせず、その態勢のまま手足の先からゆっくり動かし、曲げ伸ばしをしてから立ち上がるようにしましょう。
実施のポイント
力を入れているとき、抜いたときにその部位の感覚をじっくり味わうことがポイントです。特に力を抜いたときのゆるんだ、リラックスした体の状態を感じることが大切です。
緊張と弛緩をくり返し観察することで自分の緊張状態に気づくことができるようになり、ほどよく緩んだ状態を保てるようにしていきます。続けることで効果が実感しやすくなります。
筋弛緩法は不眠にも効果があると言われています。眠れないときにベッドに横になってやってみていただいても良いと思います。
夜目が覚めてしまってもう一度寝たいなあというときは、覚醒レべルが上がらないよう弛緩のみ行うと効果的です。その場合は、力を入れない分、弛緩する筋肉に意識を集中させ、一気に抜くことがポイントです。重く沈み込んでいくイメージで行ってみましょう。吐く息に合わせて抜くとよいでしょう。
すべての部位を毎回行うことはなく、気になる部位だけ行っていただいても良いと思います。生活の中に筋弛緩法をとり入れて、リラックスした心と体で日々の生活を乗り切りましょう。
(文:野田夏子)